友愛ファームゲストハウス

Design 2019-2023

Location 北海道夕張郡栗山町鳩山

Building 宿泊施設

photography by 小川 重雄

鳩山家の「想い」

友愛ファームゲストハウス」は、明治27年に私の曾祖父和夫をはじめ三人が共同出資し政府から払い下げをうけた、当時は「栗山共同農場」と言い、その後明治31年に他の二人の希望で和夫が買い上げた「鳩山農場」の跡地に立地しています。

また祖父・一郎は、青年時代、毎年夏にこの鳩山農場へ避暑に出かけ、農作業に汗を流し、雄大な自然の中で読書や勉強に没頭する晴耕雨読の毎日を過ごしました。このような時間は二十代の彼にとって大変魅力的でしたが、一方で想いを寄せる薫(祖母)と離れて暮らすことが一郎には淋しく、恋心はさらに募ったようです。農場から薫への「恋文」は、毎日日記のように書かれて送られ、二人の愛の歴史となりました。


​私ども鳩山家とこの栗山の地が歴史的に結ばれ、私もそのご縁があればこそ、皆さまのお世話になりこの地から出馬し議員活動ができたことは間違いありません。


数年前に様々な経緯を経てこの土地が私自身の所有になったときに、この地を利用して何か恩返しができないかと考え、地元の皆さまともご相談しました。資料館建設などのお話もありましたが、至った結論は一番ご要望の強かった宿泊施設であり、皆様に愛される『友愛ファームゲストハウス』が誕生することになりました。

私にとっては初めての事業ですが、当館が栗山町の新しい地域拠点として、空知や道内各地はもちろんのこと、国内外の多くの方々に愛されますよう、関係者一同尽力して参ります。

曾祖父が農場を拓いてから約130年経った今、コロナ禍を経て、仕事や日常生活の過ごし方や価値観は変化し多様化しています。栗山の自然は、いわゆるリゾート地にはない時の過ごし方を通じ、皆様の心を様々な形で癒してくれるものと確信しております。

今後とも末永く「友愛ファームゲストハウス」をご愛顧賜りますようお願い申し上げます。


合同会社友愛企画 代表取締役

鳩山  由紀夫


設計者の「想い」

今回のプロジェクトは、オーナーである鳩山由紀夫先生からの想いをうけ、地元の方々の想いも伺いながら、130 年前に鳩山農場のあった土地に、「明治の開拓期から縁のある栗山町のためになる施設」を構築することだった。


この栗山の土地にどのような建築をつくるかを考えたときに、まず思い浮かんだのはD 型構造の倉庫だった。

東京と北海道を行き来する中で目にしていた、過酷な冬の環境に耐えるD 型構造の倉庫は、北海道の自然や風景に溶け込んでいると感じていた。

またこのプロジェクトに関わる前、青森県の三内丸山遺跡を訪れる機会があった。縄文時代の住居、倉庫と視察しているなかで「集会所」として使われていた大型住居跡があった。そこでは集落の人たちが集い、会議をしたり、保存食を調理したりと共同作業の場となっていたようだ。この「集会所」もD 型構造の形状をしていた。


鳩山先生の想いをお聞きしたとき、北海道の大地に根ざしたD 型倉庫のかたちと、人類が集う場としての縄文期の大型住居跡のかたちがリンクし、コンセプトの基盤となった。

縄文の時代、木や藁の建築のもと、雨風雪をしのぎ、人々が集まり生活していたのと同じ空間を、約6000 年前から続く現代のコミュニティスペースとして、栗山町鳩山の地に実現することを考えた。


北海道の自然と木のぬくもりを表現するため、木造建築とした。ゆるやかなカーブを描くS 字型の平面に対し、D 型の湾曲屋根をつくる木造構造は高度な技術を必要とした。雪深い環境を考慮してコンクリートの基礎を高く打ち、その上部にD 型となる木造構造をのせる構造となっている。集会所となる大空間は、柱のない三次元トラス構造としたため、高度なデータ管理のプレカット技術と建て方技術が不可欠である。骨組みの金物は角度の異なる数値を何度も検証し、プレカット工場にて原寸大の部分組みでの確認を経て、現地での完成へ向かうことができた。S 字形状は同じ円弧を反転しているため、分節すると同じアールの反復で構成され、一見するとかなり複雑に見えるが実は合理的な構造となっている。


建物へは、130 年前の鳩山農場時代から残る動線をアプローチとしてエントランスへと導かれる。D 型のアーチと造形的な階段スロープがゲストを迎え、施設内はサロンホールと6室のゲストルーム、共同の大きなバス、ケータリング可能なプロ用キッチンがある。

行く先が見え隠れして変化するS 字の長い廊下を散策するようにゲストルームへ入り、部屋に入ると「ピクチャーウィンドウ」が切り取った雄大な自然の風景が、真っ先に目に飛びこんでくる。バスルームはガラスで仕切られており、部屋と一体となって広さと明るさを感じる構成にしている。部屋のインテリアの仕上げには、北海道の木を使い、素材の良さを体感できる空間となっている。

プライベートな宿泊はもちろんのこと、グループでの会社研修やセミナー、一定期間のイベントスペースなど、多様な活用を想定した施設となった。


高山 まさき

130年前に植樹された松と共にこの土地が愛され、2023年再びゲストをお迎えします。

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