「木の室礼」一枚の木・時の封印

Design 2019-2021

Location 銀座・巷房/万画廊

鳥海山、神代杉 二千年の火の記憶

黒褐色に輝く銘木 火山の火・灰に育てられた神代杉

 

太古の昔、山形と秋田の境に位置する鳥海山に生えていた樹木が 火山噴火による火砕流や土石流に 立木のまま流され、埋もれ。 長い年月のうち、さらに土砂が堆積し、 地中深く、菌類に浸食されることなく、ほぼそのままの状態で残ったもの。 人工的な工事で掘削された地層から偶然発見される。それがこの神代杉。

 

神代杉が地中や水の中に長い間埋没していた「埋木」といわれる所以である。

 

何百年何千年という途方もない年月のなかで いろいろな時季や偶然が重なり、 密閉状態で樹木の姿のまま現代まで残った木、神代杉。

 

多くは土中で朽ち果てて土に還る自然の営みのなかにあり、 それは奇跡。

 

地中にあるとき、杉の表面は黒色だが、内部は卵の黄身のような色をしている。 再び酸素と光にふれると、 色を変え、薄い墨色のようになり、それを数年かけて乾燥させると、 灰色の美しい色へと変化する。 永い年月を経てようやく出会える素材である。

 

磨けば磨くほど艶が出る、 渋みのある色と木目の美しさ

 

それは火と水と土がつくり出した 神秘である。

屋久島、屋久杉 七千年の水の記憶

屋久島が育んできた杉は、七千年もの樹齢をもつ。 それが屋久杉。

 

杉の平均的な寿命は五百年余りといわれているが 屋久島には二千年を超える巨木が多くある。 養分に乏しい花崗岩の地に育ち、成長が遅い。 水に恵まれつつ、 ゆっくり育つために緻密で樹脂分が多く腐りにくく 杉としては長命で巨木と成る。

 

屋久杉が育つ森林は、自生林として残された最大の杉群落。 日本の古代の風景を残す、 固有種である杉のすぐれた生育地。

 

杉はまっすぐで軽く、加工しやすい木材として 縄文時代から利用されてきた。 また、御神木や並木として親しまれてきた樹木。 江戸時代には、建築材として真っすぐな屋久杉を選んで抜き切りし、 伐採跡の明るい場所に次の世代につなげる植林も行われた。 伐採跡に育った小杉に比べると 本来の「屋久杉」の多くは巨木で、凹凸が激しく、 利用しにくいために切り残された。

 

強風にさらされ、豊かな雨に包まれ、岩の上で じっと立ち続けた屋久杉は 人の手を退け、人の前に在り続ける。

CONTACT

03-3563-3008

mail-icon